私たちの社会は、倫理観や信頼関係、慣習など様々な規範によって成り立っています。法律というのはそうした規範の中のひとつに過ぎません。そして、もしかしたら法律は、そうした規範の中で最も低次元なものかもしれません。なぜなら、法律によって示されるのは、私たちが守るべき最低限であるのが常であるためです。
したがって、法律をあたかも万能な武器であるかのように振り回したり、法律が社会の隅々に浸透すれば素晴らしい世の中がやってくると嘯いたりするのは、時に滑稽ですらあります。少なくとも敬意に基づく関係性はそうあるべきではないでしょう。
「シンガーソングロイヤー」というのは、弁護士になって間もない頃に私が考え出した「肩書」です。法律家である以上、法律を軸足に置くとしても、より社会的に妥当な結論や手続は何か、もっと言うとクライアントが世の中から尊敬される存在であり続けるためにはどうすればよいか、といったことを考慮に入れて判断を行いたいという思いで仕事を続けてきました。法律的に妥当であるのと同時に、物語としても美しいこと・・こうした判断をクライアントとともにできる存在でありたいと願っています。