ハワイからのレポート 第3号
<米国留学中の西片和代弁護士によるレポートをお届けします>
ハワイ州のOffice of the Public Guardian(公的後見人事務所)を訪問しました。
日本では、2000年から、家庭裁判所の関与の下で成年後見制度が運用されており、後見人の担い手は、家族・親族及び職業後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士)がほとんどです。
高齢化に伴う後見人不足を補うため、市民後見人の養成も言われています。
これに対してハワイ州では、既に1984年から、法律に基づいた公的後見人の制度があります。
「公的」の名の通り、州裁判所に所属する後見人が、家族等に適任者がいない場合に後見を行います。
司法予算で運営され、現在800人近くの後見を必要とする人々のために、約10人の公的後見人がサポートをしています(一人で80人以上を担当)。
なお、ハワイ州では、guardianとconservatorという2種類の言葉が区別して使われています。
Guardianは、医療同意権も含め強力な代理権がある一方、日常的な収支以外の財産管理はせず、本人に不動産等の資産がある場合、別途選任されるConservatorが財産を管理します。日本の後見人が、身上看護も財産管理も行うのとは違いがあります。
日本でも公的後見人がいれば安心、と思えますが、アメリカと日本では、そもそも背景事情が大きく異なっています。
アメリカでは多くの人が、予め、信託や持続的代理権(日本の任意後見とは似て非なるもの)を利用して、自ら意思決定できなくなった場合の備えをしています。
後見が利用されるのはそうした備えのない例外的なケースで、しかも公的後見は、家族等に適任者がいない場合の例外中の例外、まさに「最後の手段」なのです。
遺言や信託を活用した備え(estate planning)について、引き続きリポートする予定です。
最高裁判所正面
高齢者法のテキスト